gdgd日記

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS ストレージサービスは著作権侵害?

<<   作成日時 : 2007/05/30 23:01   >>

トラックバック 1 / コメント 0

 5月25日に、東京地裁で「ストレージサービスは著作権侵害」にあたるという判決が出されたということで、かなり話題になっています。当初、新聞報道でしか内容がわからなかったのですが、今週になって、判決文全文及び関連資料が裁判所のサイトにアップされていましたので、一応目を通してみました。

 以下、自分なりの感想を述べてみようと思いますが、その前に参考までに事案の概要を紹介しておきます。

(事案の概要)

(1) 問題となったのイメージシティ社(以下「I社」)が2005年11月から提供した”MYUTA”というサービス。

(2)サービスの概要は概ね以下の(a)-(g)の通り。
 (I社の2005年のプレスリリース、及び本件判決の参考資料も参照のこと)

(a) 利用者は、契約によりI社のサーバー上に自分専用のストレージスペースを確保
(b) 利用者は、I社が提供(無償貸与)する専用のアプリケーションソフト(MUSIC UPLOADER)を自分のPCにダウンロード。なお、このMUSIC UPLOADERはI社のサーバーと接続している状態で機能するソフト。
(c) 利用者は、MUSIC UPLOADER(又はその他の変換ソフト)を使って、自分が保有するCD等の音源をmp3、wmv形式のファイルに変換。
(d) 利用者は、MUSIC UPLOADERを使って、上記mp3及びwmv形式のファイルを3G2形式(KDDIのau専用形式)のファイルに変換。
(e) 利用者は、変換した3G2形式のファイルをMUSIC UPLOADERを使って、I社サーバーの自分のストレージスペースにアップロード。
(f) 利用者は、アップロードしたファイルを、随時サーバーから自分の携帯にダウンロードして音楽を聴くことが可能。
(g) なお、ダウンロードは利用者自身の特定の携帯に限定される。これにより、MUSIC UPLOADERをインストールしたPCとサーバーから3G2ファイルをDLする携帯端末は1対1対応となる。

(3) I社がサービスを開始した後、2006年2月に、JASRACがI社に対し、サービスの休止と権利者の了解を得ての再開を申し入れ。

4) I社は、4月に同サービスを休止するとともに、5月に東京地裁に対し、JASRACが著作権法に基づく同サービスの差し止め請求権を有しないことの確認を求める本件訴訟を提起。(JASRACがサービス差し止め請求を行ったものではなく、I社がJASRACの差し止め請求権の不存在の確認を申し立てたものであることに留意のこと)

(5)東京地裁は、サーバー上におけるファイルの複製はI社が行い、サーバーから携帯端末への自動公衆送信もI社が行っているものであるから、権利者の許諾を得ない限り、著作権の侵害に当たり、JASRACはサーバーでのファイル保管及び携帯端末への送信の差し止め請求権を有するとの判断の下に、I社の差し止め請求の不存在の請求を却下したもの。


以下、本件判決についての私の感想です。

(a) まず、本件判決は「ストレージサービス全般が著作権侵害にあたる」という判決ではありません。本件判決を取り上げたブログ等の中には、ストレージサービス全体に影響が出るのではないかという論調も見受けられましたが、おそらく新聞報道等から判断されてそのような懸念をもたれたものだと思われます。しかし、判決全文を読む限り、本件判決が直ちに一般的なストレージサービスへ影響すると考えることは適切ではないと思います。

(b) 今回の判決の基本的な考え方は、いわゆる「カラオケ法理」に基づくものです。カラオケ法理による利用主体の拡張の範囲をどこまで認めるかについては種々の議論がありうるところですが、カラオケ法理自体は判例上定着した考え方であり、その意味では今回の判決も事実認定には特色はあるものの、法的構成としては特殊なものでないと思います。

(c)具体的にみると、本件事案では、サービス提供業者であるI社が、権利者の複製権と公衆送信権の二つの権利を侵害しているのではないかという点が争点になっていました。I社はいずれについても行為の主体は利用者であって、自社は行為主体ではないと主張していたわけですが、判決はカラオケ法理を適用してI社を行為主体と認定したわけです。

(d) まず、サーバー上での複製については、@サーバーに3G2ファイルを蔵置する複製行為は、本件サービスにおいて極めて重要なプロセスと位置付けられること,Aサーバーは,I社が所有し,その支配下に設置して管理してきたこと,BI社は、本件サービスを利用するに必要不可欠なソフトを作成して提供し,当該ソフトは,サーバーとインターネット回線を介して連動している状態において,サーバーの認証を受けなければ作動しないようになっていること,Cサーバーにおける3G2ファイルの複製は,ユーザソフトがユーザのパソコン内で起動され,サーバー内のストレージソフトとインターネット回線を介して連動した状態で機能するように,I社によってシステム設計されたものであること,Dユーザが個人レベルでCD等の楽曲の音源データを携帯電話で利用することは,技術的に相当程度困難であり,本件サービスにおけるサーバーのような携帯電話にダウンロードが可能な形のサイトに音源データを蔵置する複製行為により,初めて可能になること,Eユーザは,サーバーにどの楽曲を複製するか等の操作の端緒となる関与を行うものではあるが,サーバーにおける音源データの蔵置に不可欠なユーザソフトの仕様や,ストレージでの保存に必要な条件は,I社によって予めシステム設計で決定され,その複製行為は,専らI社の管理下にあるサーバーにおいて行われるものであること、という諸点に照らし複製行為の主体はI社としています。
 音楽ファイルの複製が行われているサーバーの当該サービス全体の中での機能やI社のサーバーに対する支配管理性の強さに着目したものであり、典型的なカラオケ法理の適用といえます。本件サービスについての業者の関与の度合いを考慮すると首肯できる内容であると思います。
 ここで判決が単にサーバー上で複製が行われているということのみでI社が複製行為の主体であると結論づけているわけではなく、@からEまでの判断要素を掲げていることが重要です。本件判決がストレージサービス一般に直ちに波及するわけではないと考える所以です。

(d) 公衆送信権についても送信行為の主体がI社でるとの結論については、異論はないのですが、そもそもサーバーから携帯端末への送信が「公衆」への送信といえるかどうかについては、本件判決の結論に異論があります。
 判決は、「本件サービスは、インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話を有するユーザが所定の会員登録を済ませれば,誰でも利用することができるものであり,I社が会員登録をするユーザを予め選別したり,選択したりすることはない。「公衆」とは,不特定の者又は特定多数の者をいうものであり、ユーザは,その意味において,本件サーバを設置するI社にとって不特定の者というべきである。よって,サーバからユーザの携帯電話に向けての音源データファイルの送信は,公衆たるユーザからの求めに応じ,ユーザによって直接受
信されることを目的として自動的に行われるものであり,自動公衆送信ということができる。」と述べています。
 しかし、サーバーからの送信行為のみに着目し、I社にとっては利用者は不特定者であるとの論理はあまりにも形式的法文理解であると思う。本件サービスのようなアップロードするPCとダウンロード先である携帯端末が1対1対応である場合には、個々のファイルの送信に着目したときに、送信先が一意的に定まっているのであり、これを不特定者として自動公衆送信に該当するとするのは、本来公衆送信権が保護しようとする対象の範囲を超えていると思います。

(e)結論としては、本件判決については複製、公衆送信の主体がI社であるとの見解には消極的賛成(積極的に賛成しないが論理的におかしいとはいえない)、公衆送信権の「公衆」の解釈については反対というのが、私の評価です。

 なお、今回の裁判の大本は、JASRACがI社の本件サービスにクレームをつけたことにあります。個人的には、この種のユーザーの私的利用に限りなく近いと考えられるものを補助する形態のサービスに、「カラオケ法理」を適用して業者の責任を問うという行動をとるのは、JASRACとしても自制した方がよいのではないかと思います。
 本件判決の法理論上の是非は別として、このような行為は長期的に見ると権利者が自分自身の首を絞めるような形になりかねません。コンテンツ流通に関し”権利者悪者論”が蔓延しかけている状況にもっと危機感を持つべきではないかと考えてます。このまま行くと、許諾権の範囲を制限し、事後報酬請求権で権利処理の円滑化とコンテンツ流通促進を図ろうとする流れがますます強くなると思います。個人的にはそれでも一向に構わないのですが、権利者や権利者団体の人達はそのあたりをどのように考えているのか極めて疑問です。




 なお、本件判決の裁判長は、一部で有名な高部眞規子判事です。高部さんは最高裁調査官も務めた優秀な裁判官だと私は評価しているのですが、なぜかネット上では極めて評判が悪く、2chなどでは「また高部か」などと揶揄されることが多い人です。
 おそらく、2005年2月に出された、「一太郎」「花子」のアイコン操作に係る特許権侵害を巡る裁判で、松下電器の主張を認め、「一太郎」「花子」の製造・販売中止というあまりにも衝撃的で広く話題になった判決を出したことに、現在の悪評は帰因しているものと思います。
 しかし、高部判事が担当した裁判の判決をよく読むと、決して理由もなく特殊な判決をするトンデモ裁判官ではありません。
 また、権利者擁護的な判決ばかり下しているかのごとき論評もみかけますが、これも事実と違っています。

 例えば、SONYのロケーションフリーを利用して海外に録画番組を送信するサービスを提供している事業者(まねきTV)のサービス差し止めをテレビ局が求めた「まねきTV」事案では、テレビ局の申し立てを退けて、当該サービスを適法としています。結論としては、今回の判決とは正反対ですが、決定理由を読むと、カラオケ法理の適用に関する考え方は一貫しており、論旨も明快です。

 また、著作権のいわゆる「53年問題」について、「ローマの休日」の著作権をめぐる裁判で、文化庁の解釈を退けて、権利者である映画会社を敗訴とし、激安ソフトの流通に道を開いたのも高部判事です。

 そもそも悪評の原因となったと思われる「一太郎・花子」裁判でも、判決文を子細に読むと、ジャストシステム側の松下側の特許権に対する攻撃が不味かったことがジャスト敗訴の一因となっています。本件では、控訴審で逆転判決が下されていますが、これはジャスト側が新しい材料を持ち出しての松下の特許権を攻撃したのが功を奏したという見解もみられます。裁判官はあくまでも、法定に提出された双方の証拠に基づいて判決を出さねばならず、訴訟における攻撃・防御がまずいと常識的には負けるはずのない裁判に負けたりするのは珍しくありません。

 高部さんの書いた判決文はどれも論理の流れが明快で非常に読みやすいです。ネットのことがよくわかっていないのではないかとの批判も目にしますが、これも判決文を読む限り、必要十分な理解はされていると思います。

 私は、高部さんとは、何ら面識はなく、また、高部判決をすべて支持するものでもありませんが、あまりに悪口がおおいので、ちょっとだけ弁護してみた次第です。

(追記)
高部判事を肯定的に評価しているブログを2つみつけましたので、参考までに記しておきます。両者とも私のような素人と違って法律に造詣の深い方のようであり、よりわかりやすく高部判事について論評されています。
○KTSK(高部眞規子判事への誤った評価
○ナガブロ(高部眞規子判事のオシゴト ベスト10

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
今日の一日
今日は、お休みだったのでパソコンで遊んでいました。ネットで色んなところにいけますね。あ グーグルアース知ってます? 知ってますよね。あれはいいですね。 エジプトのスフィンクスやピラミッド自分の住んでいるところなど散策し... ...続きを見る
ケーキ取寄して見ませんか!!
2007/06/10 07:53

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文