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zoom RSS Winnyの判決について思うこと

<<   作成日時 : 2006/12/13 22:14   >>

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 Winnyの開発者で著作権法違反(公衆送信権侵害)の「幇助」に問われていた47氏こと金子勇被告に対し、京都地裁は罰金150万円(求刑:懲役1年)の有罪判決を言い渡した。

 本件の判決要旨がasahi.omに掲載されているので、引用する。

 ●被告の行為と認識

 弁護人らは、被告の行為は(著作権法違反の)正犯の客観的な助長行為となっていないと主張する。しかし、被告が開発、公開したウィニー2が、実行行為の手段を提供して、ウィニーの機能として匿名性があることで精神的にも容易ならしめた客観的側面は明らかに認められる。
 ウィニー2は、それ自体はセンターサーバーを必要としない技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものだ。技術自体は価値中立的であり、価値中立的な技術を提供することが犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助(ほうじょ)犯の成立範囲の拡大も妥当でない。
 結局、外部への提供行為自体が幇助行為として違法性を有するかどうかは、その技術の社会における現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様によると解するべきである。
 被告の捜査段階における供述や姉とのメールの内容、匿名のサイトでウィニーを公開していたことからすれば、違法なファイルのやりとりをしないような注意書きを付記していたことなどを考慮しても、被告は、ウィニーが一般の人に広がることを重視し、著作権を侵害する態様で広く利用されている現状を十分認識しながら認容した。
 そうした利用が広がることで既存とは異なるビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーを開発、公開しており、公然と行えることでもないとの意識も有していた。
 そして、ウィニー2がウィニー1との互換性がないとしても、ウィニー2には、ほぼ同等のファイル共有機能があることなどからすれば、本件で問題とされている03年9月ごろにおいても同様の認識をして、ウィニー2の開発、公開を行っていたと認められる。
 ただし、ウィニーによって著作権侵害がネット上に蔓延(まんえん)すること自体を積極的に企図したとまでは認められない。
 なお、被告は公判廷でウィニーの開発、公開は技術的検証などを目指したものである旨供述し、プログラマーとしての経歴や、ウィニー2の開発を開始する際の「2ちゃんねる」への書き込み内容などからすれば、供述はその部分では信用できるが、すでに認定した被告の主観的態様と両立しうるもので、上記認定を覆すものではない。

●幇助の成否

 ネット上でウィニーなどを利用してやりとりされるファイルのうち、かなりの部分が著作権の対象となり、こうしたファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く利用されている。
 ウィニーが著作権侵害をしても安全なソフトとして取りざたされ、広く利用されていたという現実の利用状況の下、被告は、新しいビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーが上記のような態様で利用されることを認容しながら、ウィニーの最新版をホームページに公開して不特定多数の者が入手できるようにしたと認められる。
 これらを利用して正犯者が匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機とし、公衆送信権侵害の各実行行為に及んだことが認められるのであるから、被告がソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為は幇助犯を構成すると評価できる。


 私は、裁判所が、「ウィニー2は、それ自体はセンターサーバーを必要としない技術の一つとしてさまざまな分野に応用可能で有意義なものだ。技術自体は価値中立的であり、価値中立的な技術を提供することが犯罪行為となりかねないような、無限定な幇助犯の成立範囲の拡大も妥当でない。」という認識を示していることは評価できると思う。

 また、幇助行為として違法性の判断要素として、
  (1)その技術の社会における現実の利用状況、
  (2)それ(利用状況)に対する認識
  (3)提供する際の主観的態様
を挙げている点もこの限りにおいて、概ね妥当なものと考える。

 しかし、これら3つの要素に照らした具体的な事実認定の在り方に疑問がある。結果として判決が自ら述べているのとは異なり「幇助犯の成立範囲の拡大」のおそれを懸念させるような結論になってしまっている。
 私が問題だと考えるのは、特に、上記(3)の主観的態様についてである。判決要旨で述べられているのは、「そうした(著作権を侵害する態様の)利用が広がることで既存とは異なるビジネスモデルが生まれることも期待し、ウィニーを開発、公開しており、公然と行えることでもないとの意識も有していた。」ということでしかない。これは違法性を認定する要素としては、抽象的、一般的にすぎるのではないだろうか。これをもって「被告がソフトを公開して不特定多数の者が入手できるよう提供した行為は幇助犯を構成すると評価できる。」とするのは、正犯の実行行為に対する主観的認識が全く無くてもよいということであり、幇助犯をあまりにも広範囲に認めることにつながると思う。
 正犯がWinnyを著作権違反行為に利用することについて、正犯を特定しての個別具体的な認識までは必要としなくても、何らかの形で正犯との紐帯が窺えるような主観的態様を必要とするべきではないか。本件のような技術の提供行為は、不特定多数者の利用を前提とするものであることから、この程度の主観的態様で違法性が認定されるのなら、幇助犯になりうる範囲が限りなく広がりかねない。上記(3)の要素は違法性の判断要素としては有名無実なものになってしまうと思う。

 また、今回の判決のロジックをそのまま活用すれば、今回の正犯と同時期に同様のやり方で著作権違反行為を行った者が別途摘発された場合、金子氏は当該犯罪についても幇助犯に成りうるいうことになる。Winnyの開発・頒布という一連の行為によって、理論的には何度も幇助犯に問われる可能性があることになるが、果たして幇助犯の成立の在り方としてそれが妥当であろうか?
 もう一点、今回の判決のロジックを形式的に当てはめれば、WinnyをCDに入れて頒布した雑誌やWinnyをDLできるようにして使用法の解説までしているようなサイトは、どれも上記(1)-(3)について、金子氏と同様の違法性は認定しうるものであり、幇助犯に成りうるのではないか。開発者と頒布者の刑法的観点からの責任の違いはどこに求めればよいのだろうか?疑問の残るところである。

 なお、付言しておくと、私は今回の判決に批判的ではあるが、だからといって必ずしも金子氏の立場を支持しているわけではない。
 正直言って、金子氏が47氏として2hのダウンロード版で活躍していた当時の言説と照らし合わせると最近の物言いは格好良すぎるよなという気がしないではない。IT社会においては、高度な技能を有する技術者は相応の倫理観が求められる。著作権法の在り方に一石を投じるという考え方自体は、それとしてありうるとは思うが、方法論としてWinnyの現にあるような形での開発と配布が、金子氏ほどの能力のある技術者の行動として適切であったかどうかは、それが刑法で処断すべきようなものではないとしても、倫理的な側面から議論の対象になりうるのではないか。

 金子氏や弁護側は、「日本のソフトウエア技術者があいまいな幇助の可能性に萎縮して、有用な技術開発を止めてしまう結果になることが何よりも残念」「日本のIT技術の発展を終わらせる判決。誰も怖くてプログラムを開発できなくなる」と言った趣旨のことを述べているようだがこれには賛同できない。牽強付会だと思う。
 確かに、今回の判決はロジックとしては、Winny以外のP2Pソフトについても妥当するし、さらには様々なソフトウェア一般についても妥当しうる。しかし、違法性の要素はあくまでも、、(3)の主観的態様だけではなく、(1)の利用実態において違法な態様で広範囲に利用されているという点と(2)その事実に対する認識という要素を合わせて総合的に判断されるものである。提供ソフトが、Winnyの場合のように極めて広範囲に違法な態様で利用されているという場合はそうそうあるものではない。その意味で(1)の要素を満たす場合は極めて限定されるであろう。さらに、(2)についても違法な利用状況が広範囲にあることを認識しつつ漫然と開発を行う技術者がそれほどいるとは思えない。上述のように(3)の要素の適用の仕方には問題があると考えるが、(1)-(3)を総合的に判断するということを正しく認識する限り、ソフト開発一般に萎縮的な効果を及ぼす可能性は著しく低いと思う。
(強いて言えば、他のP2Pソフトは問題になりうる。例えば、Winnyに代わって利用者が増えているShareなどは、これを利用した著作権違反事案があれば、本判決と同じロジックで開発者は幇助に問われるおそれはあるであろう)

 したがって、本件がソフト開発全体に対する危機のように主張する意見には極めて違和感を覚える。少し厳しめに言わせてもらえば、技術者としての倫理観の欠如がもたらした行為を弁護するのに、他のソフト開発者を巻き込むなといいたい。

 結論として言えば、今回の判決は、幇助犯概念を拡大しすぎているというその一点においてのみ、問題があると考える。
 

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ウィニー開発者に有罪判決
ウィニー開発者に有罪判決!! ...続きを見る
Catch up Dream
2006/12/14 07:55
winny開発者が有罪判決を受けましたが、
そもそも、検察側の当初の論点がすり替えられていませんか?「著作権違反を蔓延させるのが開発者の目的」だとか言っていたような気がするけど、判決は「著作権対策を怠ってきた」でしょ?これは、検察側のひとつの大きな根拠を打ち砕いたって事にはなるのかな。今回の事件は開発者の幇助が問われていますが、そもそも、デジタルデータのコントロールを完全にするっていうのはかなり難しいことではないでしょうか?パソコンはケータイと違っていろいろな操作ができるわけだし、コントロールを完全に失わせるのは出来な... ...続きを見る
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