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help リーダーに追加 RSS 「鴨川ホルモー」 (万城目学 産業編集センター)

<<   作成日時 : 2006/08/02 19:26   >>

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 この表題をみた人は10人が10人、「ホルモーってなんだ?」と思うだろうが、それは読んでのお楽しみ。

 物語は、京都大学青竜会という不可思議なサークルに足を踏み入れた主人公の安部が、サークルの仲間達と協力しながら、立命館大学、京都産業大学、龍谷大学の代表と「ホルモー」という対抗戦を行っていく中で、大学生活につきものの、友情、葛藤、恋愛等が繰り広げられるというもの。

 ある意味極めて正統的な青春小説だが、現代風の軽やかさと、ファンタジー的というか超自然的要素を非常にうまくとけ込ませているのが特徴。設定が京都という都市空間に良く合っている、というより京都という街でなければ成り立たない小説。その意味では、京都に土地感のある読者の方がより楽しめるだろう。
(私自身、20年前に京都で5年間の学生生活を送ったことがあるので、読んでいて"そうそう"、"あるある"の連続でそういう点でも楽しめた)

 文章は一読した印象は決してうまくはないのだが、いわば軽味のあるへたうま系で本作品にはよくあっている。プロットも単純とみせつつ、通常の四大学対抗競技に終わらせないで、恋愛問題を絡めて、別の対抗戦に持って行き、ラストの方では過去の事象とつなげて開いた構造にもっていくところなどはなかなかうまい。主人公の安部とその友人高村のコンビも良い。特に安部は、ややカリカチュアライズされているが、いかにも自意識過剰の京大生という感じが良く出ている。強いていうとヒロイン2名の造形や行動描写にもう一工夫あっても良いかなという気はする。

 とにかく、軽快で読んでいて楽しい青春小説。私は、読後感の良い小説は高評価するのだが、そういう点では十分人にお勧めできる作品だ。

 若干の蛇足的意見。推測だが、著者は別に青春小説を書きたかったわけではないと思う。おそらくは京都大学の学生時代に「ホルモー」という着想を得、これを何らかの形で小説化したいというのが作品執筆の主要な動機ではないか。青春小説的枠組みは、ホルモーを魅力的に描くための舞台装置としてこれが最も適切であると考えたということであると思う。
 ホルモーのルールについては、作品中にもそれを記した「覚書」と必要最小限の条文の紹介はあるが、たぶん著者の手元にはより詳細な設定があるはずである。作品中では第17条の発議が重要な要素になっているが、著者はまず間違いなく第1条から第17条(直接の関係はないが、17条という条数は17条憲法を想起させる)までの実際の条文を考案して手元に用意しているに違いない。試合についても様々な展開のパタンを考えているのだと思う。作品中に使われているのはそのごく一部だろう。、
 こういうワンアイデアに準拠して秀作をものした作家の場合、次回作が、作家としての将来性を問われる重要な試金石になる。次回作にも要注目であろう。

 さらに、どうでもよいことだが、物語の後半部で活躍するK嬢はいわゆるクーデレ系。デレが出ていないときのイメージは(大木凡人というルックス描写はさておいて)長門有希。作者はハルヒを読んでいるに違いない。
                                           (2006.8.1読了)





鴨川ホルモー
万城目 学著



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